品質偽装問題と安心への取り組み

羽毛の原毛は、食用の水鳥から採取される天然の副産物です。

近年、羽毛の世界的な需要が増加し、その価格は年々高騰しています。その影響で、羽毛布団の価格を抑えるために産地偽装や、粗悪な羽毛・化学処理されたグルーダウンを使用した製品が市場に出回るようになっています。

ほとんどの販売業者は誠実に商売をしていますが、羽毛布団の中身を十分に確認せずに販売されるケースも少なくありません。中には、偽装されていることを知らずに販売している業者もいるかもしれません。

このページでは、羽毛布団業界に存在する産地偽装問題や、人体に有害なグルーダウン問題について解説し、安心して羽毛布団を選ぶためのポイントをお伝えします。

羽毛布団の産地偽装問題

2016年5月7日、朝日新聞の一面で羽毛布団の産地偽装問題が報道されました。

日本に輸入される羽毛の原毛は、中国産が48%、台湾産が29%で、この2国で全体の77%を占めています。つまり、日本で販売される4枚の羽毛布団のうち3枚は中国産または台湾産の羽毛を使用している計算になります。

しかし、市場に出回っている羽毛布団の多くは、フランス産やハンガリー産などの「欧州産」 として販売されています。

「ポーランド産羽毛」は質が高いとされますが、実際に日本に輸入されるポーランド産羽毛は全体の3%未満。それにもかかわらず、大手ECモールには驚くほど安い「ポーランド産」の羽毛布団が大量に販売されているのが現状です。

産地偽装だけではない、鳥種やダウン率の不正表示

産地偽装に加えて、「グース」や「ダック」などの鳥種や、ダウン率の不正表示も行われています。

日本羽毛製品協同組合(日羽協)が実施した抜き打ち調査では、17点中10点で不正が発覚。

中には、

  • ・「グース100%」と表示されていたが、実際はダック100%だった
  • ・「ダウン95%」と表示されていたが、実際は72%しか含まれていなかった

といった悪質な事例もあり、消費者への注意が呼びかけられています。

品質表示偽装よりも深刻なグルーダウン問題

産地偽装よりも深刻な問題が、「グルーダウン」 です。

羽毛布団は外から中身を確認できないため、飼育日数の短いひな鳥や若鳥の羽毛、細かく裁断されたクラッシュフェザーなどが使われることがあります。こうした羽毛は、本来の保温性や湿度調整機能を持たないにもかかわらず、羽毛布団として販売されています。

グルーダウン(Glue Down)とは?

グルーダウンの「グルー(glue)」は「接着剤」の意味。

つまり、粗悪な羽毛や繊維状になった羽毛(ファイバー)を接着剤で固めたものです。

この問題が深刻なのは、単に品質が悪いだけではなく、人体への悪影響が懸念されることです。

  • ・接着剤が剥がれると強い悪臭を放つ
  • ・時間が経つと、かさ高(ふくらみ)がさらに低下する

すでに中国ではグルーダウンによる健康被害が報告されており、欧州の安全基準の100倍の環境ホルモンが検出されたというデータもあります。

もともとゴミ同然の羽毛を使っているため、適切な洗浄がされていないことが多く、使用するにつれて、剥がれた接着剤やカビ、バクテリアが人体に取り込まれるリスクがあります。

羽毛の価格高騰と安売り競争が生んだ問題

このような偽装や粗悪品の流通は、世界的な羽毛の需要増加による価格高騰と、消費者の「安い欧州産」を求める傾向が原因となっています。

適正価格で販売すると売れなくなり、業界全体で削ってはいけないコストを削減する動きが生まれました。

安い製品には、必ず安いなりの理由があるということを、私たちは理解する必要があります。

羽毛の洗浄・精製を海外で行っている場合は要注意

羽毛布団の品質表示が偽装されていた場合、消費者が見分けるのは非常に困難です。

ただし、良質な羽毛布団を見分けるポイントのひとつが、「日本国内で羽毛の洗浄・精製を行っているか」です。

国産羽毛布団=国内で洗浄・精製されている、とは限りません。

実際には、年間130万枚の羽毛布団が日本で販売される中で、羽毛の洗浄・精製・縫製のすべてを国内で行っているメーカーはごくわずかです。

最終工程が日本国内で行われていれば「日本製」として販売できるため、洗浄や精製は海外で行い、最終工程だけを日本で仕上げるケースが多いのが現状です。

すべての製造工程を日本で行う価値

良質な羽毛布団は、

  • ・水鳥を何ヶ月もかけて育て
  • ・一羽からわずかしか採取できない貴重なダウンを贅沢に使用し
  • ・品質チェックを経ながら丁寧に洗浄・精製・縫製する

こうした長い工程を経て作られるため、安価な価格で製造できるはずがありません。

特に海外で洗浄・精製を行う場合、下記のようなリスクがあります。

  • ・欧州産の羽毛に中国産の羽毛やグルーダウンを混ぜる偽装がしやすい
  • ・洗浄の質が不明確で、不衛生な羽毛が流通しやすい

消費者の安心のため、和雲では羽毛布団の製造工程を公開しています。

安心して羽毛布団を購入するには、「どこで洗浄・精製された羽毛か」を確認することが重要です。